森下さんの裁判を傍聴
8年前の2015年に北九州市戸畑区役所の子ども・家庭相談コーナーの相談員として勤務していた森下佳奈さん(当時27歳)が自死しました。原因はパワハラによるものです。
当時、同じ非正規公務員の身だった私にとっても他人事ではなく、両親が訴えた裁判をずっと見守ってきました。
その判決が1月20日の午後から言い渡されることになり、福岡裁判所で傍聴してきました。
判決は、請求棄却。
あまりにも非情な判決に原告席の母親の真由美さんの表情を見ることができませんでした。
判決の約1時間後に司法記者室で記者会見があり、弁護士の説明、そして、ご遺族の思いを聞いてきました。
勤務に起因するうつ病は、民間企業であれば労災認定がされます。
公務員も正規公務員であれば、国家公務員法、地方公務員法で守られます。しかし、非正規公務員を守る法律は当時は何もありませんでした。
死亡後に両親が労災認定の手続きをしようとされましたが、「非常勤職員は、条例で本人や遺族は請求できない」とされたのです。
非正規公務員は命の扱われ方まで差別を受けるのか?やるせない思いが込み上げました。
記者会見での母親の真由美さんの震える声が耳から離れません。
佳奈さんが頑張って生き抜いた時間を無視した今回の判決はどんなに無念だろうと思います。
亡くなった娘の冷たくなり、力のない身体を抱き上げた時の話、退職してからも臨床心理士を目指して勉強を続けていた話、そして、「私は間違ってないよね」と問われた時に「間違ってないよ」と言ったことが悔やまれると。その時になぜその場から逃げることを伝えてあげられなかったのかと娘に謝りたいと。
森下さんの自死をきっかけに総務省は、非常勤職員にも労災認定の請求権を認めるよう通知し、全国で条例の施行規則が改正されました。
しかし、手続きのことだけ改正されても、それでは遅いのです。
全国で非正規公務員の数が増えつづけています。公務員バッシングがこの状態を生み出しました。
多くは、専門機関の相談窓口、市民サービスの最前線で働く人たちです。
その雇用は、不安定で、低い賃金。本人たちが健康や命と隣り合わせになっています。
二度とこんな悲しみを生み出してはなりません。
